今どきのサプライヤー訪問を考える 3

前回の記事でお約束した「変化」です。

サプライヤーの工場を訪問するときの目的は、大きく2つに分かれます。1つは、初めて購入するときに、バイヤー企業の要求内容を実現できるかどうかの確認。サプライヤーが法人として能力を有しているのかどうかを、実際に工場を見たり、サプライヤーの担当者から話を聞いたりして判断します。具体的には、サプライヤーの工場に能力があるか、類似した完成品をチェックして、実現可能性を確認します。

もう1つ、これまで購入実績があって、将来的にも購入を継続したいときに、継続的に発注しても過去と同じように実現性が確保されるかどうかの確認です。一度は、実現可能性を図って、実現できると判断したからこそ発注したわけです。そして一定の時間が経過して、過去の判断を現在も同じ、あるいは改善して実現可能性が向上していると判断します。これは「継続」確認や審査と言われています。

サプライヤーとの関係性は、長期的な関係性を前提にすると、さまざまな取り組みができます。いわゆる「良好な関係」にしても、長期的な関係構築を前提にすれば、大きな問題に直面しても、両者で協力して乗り越える取り組みが可能です。長期的に良好な関係を維持するために、サプライヤーの「変化」を見極めが欠かせません。

「変化」とは、社員が意識していなくても起こります。そして意識していない「変化」は、好ましくないケースが多くなります。わかりやすい例でいえば、私たちは誰でも時の経過と共に加齢してゆきます。業務内容にもよっては加齢による衰えによって、従来の能力が失われている場合もあります。もちろん、人間は経験で培われた知恵によって、体力的な衰えを補いますよね。そういった行動が企業では「改善活動」の一部に該当します。

したがって、私たちバイヤーがサプライヤーを継続して確認する場合、極論すれば前日と今日の違いであっても、変化はゼロではありません。必ず変化は起こっています。しかし、バイヤー企業としてサプライヤーから購入する製品に、日々の変化の影響が出るかといえば、昨日と今日であれば、一般的には出ないでしょう。しかし、酷暑といわれた夏の暑い時期と極寒な冬の日では、違いが出やすくなります。

私の好きなラーメン店では、真夏と真冬ではスープの味を変えているそうです。しかし多くの顧客は、夏も冬もラーメンを堪能しているでしょう。ラーメンを提供する側の意識としては、外気温や湿度の変化に左右されずにおいしさを維持するために意図的に変化させているのです。私たちが確認すべきは、好ましくない変化に直面しても、従来と同じか、従来以上のアウトプットを出せる対応力です。

そして、よりよいアウトプットを実現させるための、改善活動によって実現されるポジティブな変化もあります。こういった変化では、工場訪問の際に、改善活動の成果として紹介されるかもしれません。そういった際には、過去と異なった取り組みで、同じかそれ以上の成果を生み出しているかどうかも合わせ確認します。

というのも「変化」とは、従来と異なる成果を生みます。しかし変化が好ましいのかどうかは別問題です。サプライヤー側に好ましいけど、顧客の側からすると微妙だといった変化=改善は、日常的に発生しています。先ほどと同じくラーメン店を例にすれば、従来は店内で手打ち麺が売りだったけれども、機械式に変更した場合などは、従業員にはメリットが大きいでしょう。しかし、麺の味に影響があれば、顧客には魅力の減退につながりますね。

バイヤーがサプライヤーの能力を定期的に確認する場合、変化に対する着目点を、次の2つにまとめます。

1つ目は、好ましくない変化の影響を受けながらも、従来同様のアウトプットが維持できているかどうかです。これは、周辺環境と実際に作業する従業員の変化に注目します。近年では、定年退職によって担当が変更された場合に、従来と同じようなアウトプットができるかどうかが、どんなサプライヤーでも大きな課題でしょう。サプライヤーの社内検査で悪影響による問題が取り除かれているかどうか。また変更した新たな担当者の能力開発をどのように行うか。前担当者と同じレベルと、何を根拠に判断しているかといった質問をサプライヤーに浴びせる必要があります。

2つめは、意気揚々とサプライヤーがバイヤーへ報告するような前向きな変化です。この場合は、そういった取り組みを実践した姿勢はたたえた上で、過去の実績よりも悪化していないかどうかの確認方法を質問しましょう。工業製品の場合、例えば自動化するために機械化すれば、品質の安定には大きなメリットがあるでしょう。しかし、従来人の手でやっていたノウハウが、十分機械化に反映されているかどうか。実は、この点の確認は非常に難解です。バイヤー企業としては、できれば従来と異なる方法論での生産は、過去に問題がなければ避けてほしいのが本心でしょう。もし、品質の安定を重要視するのであれば、変化内容をあらかじめ報告させるような契約の実践も必要でしょう。

好ましい/好ましくないにかかわらず、変化によるマイナス影響を最小限、できればゼロにする取り組みは、サプライヤーが必ず実践しなければならない重要な取り組みです。サプライヤーを継続的にチェックするとは、そういった変化への対応をしっかり掌握でもあるのです。

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