今どきのサプライヤー訪問を考える 1

最近、サプライヤーを訪問していますか?

私のバイヤー時代は、サプライヤー訪問を意識的に行なっていました。それは、自分が発注した購入品が正しく生産され、要求機能や品質レベルが確保されているかどうかを現場、現物で確認したい思いが強かったためです。ただ、なかなかバイヤーの出張は周囲から理解が得られない場合もありますね。例えばこんな話がありました。

円高に悩まされ、購入品コストの外貨化を目指して進めた海外調達。しかし、日本と海外の企業の考え方には当時、大きな差がありました。そんな中、10年間を費やしても、品質の安定しない製品がありました。定期的に検査でNGになるのです。担当バイヤーは、なにかあるたびに社内を駆けずり回って、海外のサプライヤーにも赴いて、事態の打開を図っていました。

そんな状況の中、私にも海外調達実現の指示がありました。そして、サプライヤー探索の結果、他の製品で10年間品質の安定しなかった同じ国に見つけました。当然、10年もの時間はありません。できるだけ早く実現しなければならない。幸いにして、全社的に海外調達を拡大する方針によって、出張旅費の予算はありました。私は、サプライヤーの見極めを、社内の総力を挙げておこないました。

具体的には、総勢7名でサプライヤーを訪問したのです。

担当バイヤー 1名(私です)
通訳 1名(英語圏ではなかったので、綿密なコミュニケーションに不可欠でした)
設計 1名
品質保証 2名(品質システムと受け入れ検査各1名)
生産技術 溶接 1名
生産技術 塗装 1名

同じサプライヤーに、同じタイミングで7名で訪問するなんて、後にも先にもこと時だけでした。周囲からは「物見遊山だ」といった批判の声が私の耳にも届きました。でも、私は「購入を実現させればいいや」と、あまり意に介しませんでした。

社内を巻き込んだ結果、海外調達の検討を開始してから約9ヶ月で、量産品の購入が実現しました。以降10年近く購入が継続し、トータルコストでは国内調達の継続よりも大幅なメリットが確保できました。購入が実現によって、社内表彰も受けました。異例のスピードで海外調達を実現させたのです。

この取り組みは、私にとって大きな学びの機会でした。調達・購買部門のバイヤーであれば、サプライヤーに行くのに、部門内では異論はないでしょう。しかし、関連部門では「なんでサプライヤーへ行かなければいけないのか?」といった部分で、出張者の上位者に説明し納得が必要でした。このときはがむしゃらにやっていました。後に、サプライヤーへの訪問を

①訪問タイミング
②訪問者
③訪問目的

で定型化し、調達・購買部門内だけではなく、関連部門とも共有化しました。こういった前提条件があれば、いちいち出張の度に合意を得なくても、スムースに協力が要請できます。サプライヤー訪問では重要な目的となる工場確認も含めて、具体的な方法論をこれからお伝えしてゆきます。

1.バイヤーが工場訪問をする意味
(1)サプライヤーを評価する
(2)サプライヤーからバイヤーとして評価される
(3)表敬訪問では費用対効果が確保できない
(4)工場訪問を「起点化」する方法

2.工場訪問準備
(1)サプライヤーへどう依頼するか?
(2)サプライヤーの工場を訪問前に学ぶ
(3)発生費用の見積と効果の想定
(4)工場訪問「目的」と「同行者」に対応した準備
①採用前、バイヤーのみで訪問
②採用前、バイヤー+要求部門で訪問
③採用前、バイヤー+品証部門で訪問
④購入品の立ち会い検査
⑤サプライヤー監査
・品質監査
・持続可能な調達/CSR監査
⑥採用継続確認、バイヤーのみ
⑦採用継続確認、バイヤー+品証部門
⑧トラブルシューティング
⑨特別な事由
・表敬訪問
・関係強化/パートナーシップ構築
・お詫び

3.工場訪問日のあるべき行動
(1)適切な工場到着方法
(2)いわゆる挨拶対応
(3)いざ、工場へ
(4)作業内容確認方法
①生産
②運搬
③保管
④品質保証システム
⑤5S
⑥工場全体感
⑦「百聞は一見に如かず」を実践する
(5)工場訪問時に何よりも優先される安全
(6)バイヤーとしての進化が問われる工場見学後の対応
(7)工場訪問に「見た」以上の価値を創出する方法
・工場見学後の打ち合わせで何かを残す

4.工場訪問後のアクション
(1)適切なお礼の方法
(2)工場訪問時残した「宿題」のフォロー

5.サプライヤーの事務所/オフィスを訪問する

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