これから必要なスキルは土下座か

先日、某コンサルタントの知人と話しました。AI時代に、とくに文系社員が身につけるべきスキルは何か。結論がいくつかあり、その一つが「土下座」でした。土下座する力です。

ところで、土下座は現代では謝罪の意味で使われます。歴史的にこれは新しい使い方です。ほんらいは、対象を敬い、頭を下げる行為として土下座がありました。私たちが、身につけるべきスキルとして土下座をあげたのは、両方の意味を含みます。リーダーは問題があった際に、組織の先頭にたって土下座して責任を取る必要があるかもしれません。またあるいは、プライドを捨てて、相手に土下座し、なんとか交渉をまとめる力かもしれません。

もちろん土下座は比喩です。ただ、その比喩が意味するものは、自分をさらけ出していって、相手の懐に入っていく人間力にほかなりません。AI時代に、人間に残されるのは、まさに人間っぽい要素しか残らないと私は思うのです。あなたが上司に問題を相談したとしましょう。そのとき、グダグダと説教するだけで、結局、自分の手を汚さない上司だったらイヤと思いませんか。もし上司が「よし、じゃあ、一緒に謝りに行くぞ」といってくれたらなんと嬉しいなことか。

たとえば窮状の際、サプライヤに要求をのんでもらうために論理的な交渉は重要です。でも、「お願いします。困っているんです」と心を裸にして、情に訴える力も必要と思いませんか。AIがもし理屈と論理を請け負うのだとすれば、人間は感情の部分を引き受けるしかありません。

これはブラック企業のような働き方を推奨するわけではありません。情報と論理の時代に、逆説的なスキルが必要だと説明したいだけです。

ところで、話は変わるように変わりません。以前、経済学者の野口悠紀雄さんが、何かを勉強したければ、それについての本を書いてみればいい、といったご発言をされていて衝撃を受けました。お金をもらって勉強するというコンセプトが、あまりに新鮮だったからです。さきほど、私は土下座と比喩を使いました。では、広く考え、誰かを動かすスキルはどうやって身につければいいか。それは、誰かに説明する、説得する、納得してもらう、というプロセスが必須です。

どうすればいいか。野口悠紀雄さんの発言を思い出し、私と仲間は定期的に「誰かに説明する、説得する、納得してもらう」場を作ろうと決めました。そして、それがのちに、調達・購買関連の知識を講義する場に結実しました(たまに募集している調達・購買私塾がそれです)。聴衆は大人です。皮相的な内容だったら、まったく面白がっても、納得もしてくれません。自分をさらけ出して真剣に話すしかありません。もちろん、いまでも完璧ではありません。

繰り返すとおり、比喩として、これから必要なスキルは土下座ではないかと思います。さて、できれば、今日から汗をかきながら泥をかぶってみませんか。そして、自らをさらけ出して誰かにぶつかってみませんか。

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