サプライヤは2割怒らせ、8割喜ばせる

みなさん、コメ兵って知っていますか? コメ兵とは、いわば高額装飾品類の中古販売業者です。小売業者が消費増税後の売上高低迷に苦しむなか、コメ兵が好調です。同社が発表した「平成27年3月期3月度月次売上高のお知らせ」によると、消費税導入直後は苦戦しているものの、上半期で持ち直し、通期でも売上高は前年同期比で約110%と順調に推移しました。消費増税後に、消費者がいっせいに買い控えをするなか、確実なものを安価に買いたい気持ちは萎えていなかったわけですね。コメ兵はその心理をうまく衝き、新たな顧客も拡大させています。

仕事の関係でこのコメ兵をいろいろと調べました。この文章の読者はほとんど製造業などのバイヤーさんだと思います。しかし、コメ兵のいわゆる「宝飾品バイヤー」が大変に面白かったので共有したいと思います。なにが面白かったかというと、二つあります。まず一つ目は、奇妙なパレートの法則を使っていることです。

パレートの法則とは、全体の2割をしめるものが、全体に圧倒的な影響力を持つことです。たとえば小売店では上客2割が、売上の大半とかね。それで、コメ兵は面白いことを指標にしているんです。何が奇妙なパレートの法則かというと、この2割8割が、全社指標のいたるところに出てくるのです。そのなかでも面白かったのは、コメ兵に宝飾品を売りに来た「8割から買い取る」というのですね。

全員から買い取ってしまったら、それは高めに買い取りすぎている。全員から買い取れなかったら、他小売店にくらべて安く査定しすぎている。だから、だいたい8割のお客さんから買い取るくらいが良いというのです。サプライヤがいるとして、8割は喜ばせて、2割は「そんなに安いんだったら売らない」と怒らせるくらいが良いのですね。これは勉強になりました。

そしてもうひとつ。

それは同社を調べるたとき、ものすごく印象的だったのは、バイヤーが査定した金額は絶対に変えない点です。業界の慣習としては、わざと安めにいうだとか、顔色を伺うだとか、そういった行為が横行していたようです。しかし、それでは疑心暗鬼になってしまいます。これは逆に、買取金額を下げられない、という意味でもあります。それだけ真剣勝負をして、お客(サプライヤ)に接しています。

さらに面白かったのが、この絶対に変えない姿勢こそが、妙な交渉を避け、かつ信頼性向上に寄与している点でした。さらに同社はバイヤー育成にじゃぶじゃぶとお金を使い、そしてバイヤー間の競争も徹底させています。まさにプロフェッショナルバイヤーを目指す集団です。さほど派手な企業ではありません。ただ、見習う側面は多かったように思います。

もしよかったら、新聞紙上等がコメ兵を取り上げていたらチェックしてみてください。異業種から学べる点は多いと私は思います。

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