ほんとうに泣けるバイヤーの話
ホワイトカラー間の格差社会について(坂口孝則)
■格差社会を生きる智恵

このメールマガジンを職場で読んでいる人に告ぐ。あなたの職場にはどれほど「使えない人」がいるだろうか。まわりを見渡してほしい。そして頭の中で、何割に至るか計算してみてほしい。

ではなぜ、そんな人が発生してしまうのだろうか。どんな人でも入社時にはある程度の情熱や熱意を持っているものだが、なぜそのように使えなくなったり、どうしようもなくなったりするのだろうか。

その答えは簡単である。日々、何の改善もしていないからだ。加齢とともに、多くの場合は給料が高くなっていく。しかし、その割合どおりスキルも向上させている人は少ない。そうなれば、当然給料と比較して、個人の能力が劣っている状況となり、「使えない」「どうしようもない」人、ということになってしまう。そんな簡単な事実だ。

会社に行く。メールをチェックする。トラブルに巻き込まれる。なんとかやり過ごし、帰ったら何もせずにその日を終える。同じことを繰り返し、同じ目に遭い、同じ仕事が降ってくる。夜は、プロ野球とサッカーに興じお酒を飲んで、仕事の愚痴だけを言いながら、眠る。これまでの企業は優しかったから、そのような人であっても加齢とともに、その人の経験だけを評価し給料をあげていた。

しかし、どうだろう? このような人が毎日の仕事を改善し、すぐれた業績、すなわち後世に残るような仕事ができるだろうか。当然できない。その人にとっては、環境や会社こそが「自分をおとしめた犯人」だから、もちろん自分自身を変えようとすることもない。

あなたは、そんな人になりたいだろうか? 

私はNOだ。しかし、もう自分を変える情熱もなく、熱意もない人たちは、どうしたら良いのだろう。私はそのままでいいと思う。誰も他人を変えることはできない。そのように「使えない人」になりたいのであれば、変わらぬ日常のなかに埋没し、不平不満と愚痴だけを語りながら寝ればいい。そう思う。

誰しも、自らの奥底から沸きあがってくる「変化への欲求」抜きには、変わることはできない。ほとんどの人たちはその人にとって親でもなく、教師でもなく、恋人でもない。その人を手取り足取り指導する義務も義理もない。だから、思うのだ。変わりたくない人は、「そのままでいい」と。

■格差社会は生ぬるい

ただし、と私は思う。「そのままでいい」とは、必ずしも「そのまま安泰でいてくれればいい」ということにはならない。この世の中は、意外と経済合理的に動いていく。これまでは雇用のセーフティーネットに守られていた労働者集団は、そのうちもっと大きな格差社会を見ることになるだろう。

これまで、格差社会といっても、同一会社の同期入社のなかで、1.5倍以上の給料差がつくことは稀だった。これからは、それ以上の差がついてくだろう。なぜならば、社員間の能力差は、1.5倍などではなく、10倍、20倍の差があるからだ。皮肉として言えば、今の格差社会など、実際の能力差を考慮してみれば、きわめて平等だということになる。これを格差などと呼んでしまったら、これから来るほんとうの格差社会の前には驚愕するしかないだろう。

単純なルールがある。自分の評価をあげようと思ったら、まずは自分が他者に「何か」を与えることだ。他者を助けることだ。どうやったら、他者の役に立てるかを考え、実行することだ。自分の給料をあげようと思えば、おそらくその10倍くらいは、他者に与えることからはじめなければいけない。他者に与えることによって、自分に戻ってくる。自分の評価が高いから他者に与えることができるのではない。他者に与えることによって、自分が何か報酬を得ることができるのである。

そこでもう一度問う。あなたは将来、あなたが想像したような「使えない」「どうしようもない」人になりたいだろうか。

そして、さらにもう一度問う。あなたは同じことを繰り返し、同じ目に遭い、同じ仕事で苦労しながら。夜はプロ野球とサッカーに興じお酒を飲んで、仕事の愚痴だけを言いながら眠るような、そんな人生を歩みたいだろうか。

ホワイトカラーのコスト「一人1分100円」の法則がある。たとえば、あなたがどこかに出張したとしよう。一日8時間だから、100円×60分×8時間=4万8千円 だ。それに出張旅費費の2万円を加算する。すると、約7万円になる。あなたは、この前の出張で、その7万円分の付加価値を生み出すことができただろうか。もちろん、机に座っていても、これだけの金額が垂れ流されていく。

ここで、雇う側の視点に立ってほしい。7万円を投じて、1、2万円の付加価値しか生むことのできない社員がいたらどうするか。すぐに解雇はしないにせよ、もちろん解雇対象リストに載せるはずだ。難しいことではない。投資資本効率を考えているだけのことだ。投資した金額以上のリターンがもたらされれば、その社員を冷遇する必要性はない。ただ、その逆も然りなのである。それほどシンプルな法則でこの世の中はまわっている。

■格差社会は学びで突破できる

さきほどの話に戻る。1.5倍もないような差を「格差社会」と呼ぶな、と私は言った。社員の能力差は、それをはるかに上回っているのだから、と。これは強者の論理だろうか。もしかするとそうかもしれないし、そうではないかもしれない。なぜなら、もし弱者という立場の人がいる場合は、その立場とは、その人が選択したものにほかならないからだ。毎日同じことをする、毎日改善しようとせず、愚痴しか言っていない。自己投資をして勉強もしようとせず、現状維持だけを目指している。これが、「自ら選択した立場」ではなく、いったいなんだろうか。しかし、私はそのような人を非難しようとは思わない。そのような現状を自ら選択したので、そのまま続けていただくしかない。このことを繰り返し申し上げる。

それにしても私が安心するのは、このHPの読者のような方々の存在だ。有料メルマガにも多くの方が登録いただいた。嬉しい。きっと、登録していただいた方は、ご一緒にサバイブできる強い能力を構築できるだろう。

状況を改善しようと思えばどうなるか。格差社会といっても、実際の能力には10倍から20倍の差がついていると私は言った。しかし、この差も、改善をはかればさほど絶望的なものではない。

やや抽象的ながら、このような計算ができる。一日0.2%ずつでも成長、あるいは改善しているとしよう。そうすると、365日では、(1+0.02)の365乗で、答えは2になる。0.2%ずつの成長であっても、一年後には2倍になっているのである。ちなみに、2年間続ければ4.3倍になり、3年間続けることができれば8.9倍になる。

ほらね、3年間で追いついたでしょ。

違う表現でいえば、「何かの領域で一番になろうと思ったら1万時間が必要だ」ということになる。1万時間没頭すれば、その領域で頭角をあらわすことができるという単純なルールは、ある意味勇気を与えてくれる。

何の領域で一番になるかは各人が決めればいい。一日3時間没頭すると、年間で約1000時間だから1万時間まで10年もかかる。しかし、10時間没頭できれば年間に約3000時間として3年だ。このように頭の中で計画し、道標をつけ、具体的なイメージを膨らませていく。

私は10冊以上本を出しているが、別に特別なことをしたわけではない。私がどこでも述べている通り、考えたことを実践し、仕事を少しずつ変えてきたにすぎない。他の人たちが遊んでいるあいだに、ちょっとの勉強を重ね、他の人がテレビを見ているときに、ちょっとの工夫を考えていたにすぎない。

しかし、その小さな積み重ねこそが、大きな差を生んでいるのだと信じている。

多くの人たちは、自分が若いころに苦労した記憶を持っている。そして、同時に「あのころの経験が今を形作っている」という感想を持つ。それなのに、そんなに苦労したり、学んだりする経験を、ずっと持ち続けようとする人は少ない。経験や学びが、現在役に立ったのであれば、今だって経験や学びを重ねれば、将来もっともっと大きな成果となって戻ってくることは想像に難くない。

では、なぜそうしないのか。

あなたは冒頭で職場の「使えない」「どうしようもない」人を頭で数えたかもしれない。ただ、数年後にはあなたも、年少者からその対象として数えられることにならないとは限らない。

私は脅しているわけではない。それほど学びが必要な社会こそが、現在の知的労働社会であり、これから来る真の格差社会であると私は思う。

そのとき、あなたはいったいどちら側に立っているだろうか。

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2013年04月15日
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著者本人が当時の自分に嫉妬してしまうほど熱い文章で、あなたに伝えるメッセージ。

「過激な調達はいつも正しい1 ~調達・購買担当者を変えるささやかではない方法~」は、坂口孝則の人気メールマガジン「世界一のバイヤーになってみろ」より、2007年の1月から2007年8月までのものを、加筆修正致しました。

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「過激な調達はいつも正しい1 ~調達・購買担当者を変えるささやかではない方法~」
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2012年02月25日
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2012年01月29日
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2012年01月28日
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2011年01月28日
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