ほんとうに泣けるバイヤーの話
買い占め「異」論(坂口孝則)
今回は批判覚悟で書く。「買い占め」について。この前、「災害に立ち向かうバイヤーの会」に出席した。桜木町の某社オフィスに集まったのは20名ほど。加えて関西ともSkypeでつないだから、合計30名ほどで話し合った。その会で後半、一つ物議を醸した発言があった。「ウチは必要量以上の注文書を発行した」という。この震災のなか、納期がどれだけ遅れるかはわからない。それに他のバイヤー企業との取り合いもあるだろう。それならば、今のうちに大量の注文をすることによって、自社だけでもモノを確保しよう、というわけだ。参加者は「それはやりすぎなんじゃないの」とか「他の企業も困っているんだから、多めに発注して自社だけ助かろうとする態度はいかがなものか」とかいう意見が出された。

私は、その批判に乗じることはできなかった。少し前に、スーパーでの買い占めが話題になっていたからだ。水や食料や生活用品を人びとが買い占めることでモノ不足になっているという。

私はTwitter(@earthcream)で「大人買いするってことは、たいへん子どもの行為だったわけだ」とつぶやいた。しかし、あとあと考えてみると、どうもその意見が必ずしも正しくなかったのではないかと思うに至った。なぜか。

まわりの人びとを見る限り、そしてスーパーで実際に観察する限り、人びとはそれほど悪意をもって買い占めしたわけではなかった。いや、むしろ「買い占め」というレベルではなかったように思われる。通常の2、3割程度を、漠然とした不安にかられて買い集めているだけだ。もちろん、過剰な量を買っている人もいただろう。ただ、それにしても、それを倫理的な観点で責めるべきではない。

たとえば、幼子のためにペットボトルをまとめて買った母親がいたとしよう。それを私はいかなる立場から断罪できるというのか。正義を振りかざして誰かを批判するとき、多くの場合は、「じゃあ自分はどうなの?」という問いがすっぽりと抜け落ちている。むしろ、こんなときこそ、(もしかすると愚劣な行為に映ったとしても)買い占めをするような人たちに寛容になるべきではないか。自分を含む多くの人たちが同じ不安に覆われているなか、自由な行動に基づいて購買を行っている人たちを「正義」の名のもとで断罪すべきではない。

「自分はやっていない」だけど「買い占めしている人がいる」という批判構造は、常に「自分は頭がよくて全体最適を考えることができる」が「愚昧な大衆はそこまで考えが至らない」という、ある種の傲慢にあふれている。子供のことを考えて、家族のことを考えて、大げさにいえば「愛」のもとで行われた買い占めを(繰り返し、それが愚劣な行為に映ったとしても)、自分の倫理観だけに照らし合わせて批判対象することこそ、愚劣ではないか。批判する主体の立場は、いったいどんなものに支えられているのか。それは他者を批判できるほどの立場だろうか。

そこで考えてみよう。「まとめ発注をしたバイヤー」を私たちは倫理的に責めることができるだろうか。それは繰り返し、自由資本主義社会における、自由な発注行為だったはずだ。それに規制をかけるというのであれば、それは統制経済にほかならないだろう。私たちは矛盾した、そして決め付けに満ちた発言をすることがある。「このままでは経済が縮小するので、消費活動を活発化させろ」「でも買い占めは許さない」と。では、どの程度で妥協すればよいのだろうか。このへんがさっぱりわからない。もちろん、まとめ発注や買い占めで、その主体が批判されることもあるだろう。しかし、だからといってその行為が絶対的に悪しきものだと規定されるわけでもない。

繰り返す。人びとは平常時に他者に対する寛容を、という。それであれば災害時の他者に対しても寛容になってよいのではなかろうか。

災害の問題、原発の問題、サプライチェーンの問題。これら一連の問題を通じて考えさせられたのは、少なくとも私にとっては、批判者の立場そのものであった。政府を批判する、電力会社を批判する、そして買い占めに走る一般人を批判する。その批判者は、いったいどの立場からモノを言っているのだろうか。

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「過激な調達はいつも正しい1 ~調達・購買担当者を変えるささやかではない方法~」は、坂口孝則の人気メールマガジン「世界一のバイヤーになってみろ」より、2007年の1月から2007年8月までのものを、加筆修正致しました。

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「過激な調達はいつも正しい1 ~調達・購買担当者を変えるささやかではない方法~」
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